『李嗣源』  仁木英之 朝日文庫

五代十国史シリーズ第二作。
朱温の次の新しい英雄は誰かなと読み始めたが、
ん?時代が戻ってる!?李克用勢力視点で物語が語り直されます。
前作の主人公の朱温は完全に悪役扱い。
これは歴史小説パラダイムシフト、編年体の群像劇ではなくて、
紀伝体歴史小説にシフトする前兆か!
シリーズ最終巻が雑魚達の物語になると紀伝体ものとして完成するが、
天才の仁木先生はそこを狙っているのか!
シリーズ構成の最後まで見届けないと正しい評価が出来ません。
全何作になるか判らないが全部読まないといけなくなった。
これの主人公の李嗣源も魅力的。

本書のベストセリフ

「陰陽不調、天地の規律が崩れても、三辰失行、星の運行が乱れても、
小人訛言、つまらぬ者どもが噂を立てようと、山崩川涸、山が崩れ川が涸れても、蠢賊傷稼、賊が跋扈して人々を傷つけても恐れるに足らず。
賢人蔵匿、在野の賢人を見逃す、四民遷業、人々を本業から離す、
廉恥道破、道徳を乱す、毀誉乱真、賞罰を誤る、直言蔑聞、直言を侮る、
のは深く恐るべし」

民の為に政治して自身は贅沢しなかった
後唐二代目皇帝李嗣源はデラかっちょええ!
贅沢好きな馬鹿息子をお国の為に殺すのも三国志越えてる!

前科前歴人格に拘らず、
「ただ才のみ」
能力主義で人材登用した曹操でも、
自分の後継者は息子の中から選ぼうとしたが、
五代の英雄は朱温も李嗣源も息子と殺しあってるのが素晴しいですよね!

李嗣源(上) (朝日文庫)

李嗣源(上) (朝日文庫)

李嗣源(下) (朝日文庫)

李嗣源(下) (朝日文庫)