『夜はわが友』 エドワード・D・ホック  木村 二郎訳  創元推理文庫Mホ42

夜はわが友 (創元推理文庫)

夜はわが友 (創元推理文庫)

・黄昏の雷鳴
・夜はわが友
・スーツケース
・みんなでピクニック
・ピクニック日和
・虹色の転職
・待つ男
・雪の遊園地
・冬の逃避行
・夢は一人で見るもの
・秘密の場所
・標的はイーグル
・蘇った妻
・おまえだけを
・こういうこともあるさ
・キャシーに似た女
・人生とは?
・初犯
・谷間の鷹
・陰のチャンピオン
・われらが母校

本格マニアは読む必要ない短編集である。

シリーズキャラクター物ではない異色の短編ばかりを集めたと言うと聞こえはいいが、

ようは、シリーズ物に成れなかった滓のタコの不人気作品ばかりが収録されていると思いなせぇ!(藁

ほとんどが並み以下の切れ味の悪い中途半端な作品ばかりである。

短編集としては買う必要はない。

唯一のお勧めは「こういうこともあるさ」である。

SFであるが、専業SF作家には絶対書けない作品。

美人だが、わざとブスな外見を選択して生きるテレパシストが出てくるが、

筒井康隆の「七瀬」シリーズと比較すると、

筒井が商業主義で誤魔化している視点が、ホック作品では明確になっている。

火田七瀬って、本当にテレパシストとしての苦悩を背負い込んでいたのか?

真剣に生きる方法を考えていたら、

ホックのテレパシストが就いた職業に就いた筈である。

「こういうこともあるさ」のテレパシストが就いた職業に就いたなら、

国家権力に危険分子として追われる破目にならずに、幸せに暮らせた筈だが。(藁

で面白いのは、「こういうこともあるさ」のテレパシストも結局警官に殺されるのだが、

その殺され方はSF作家には絶対書けない方法である。

「スラン」の時代から、超能力者は迫害されるのがSFの常識だが、

どうでもいい存在をわざわざ迫害する権力者は居ません。

迫害される可哀想なエスパーという視点は、逆にエリート意識の裏返しである。

超能力者への視点が素晴らしい「こういうこともあるさ」はSFファン必読である。