『ウッドストック行最終バス』 コリン・デクスター 大庭忠男 訳 早川文庫

ウッドストック行最終バス (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ウッドストック行最終バス (ハヤカワ・ミステリ文庫)

デクスターのベストに押す人もいる作品。

悲惨な強姦殺人テーマの真面目な本格推理だが、

推理の着地の大ドンデン返しに感動する以外に、

途中の推理で大爆笑出来る本格推理って、

デクスター作品しかないよね?

知的な論理思考で笑えるというのが、重要なポイント。

しかめっ面して難しい事を考えて気取っているのではなくて、

知的遊戯として楽しむのがデクスター作品。

推理のみで、数万人の中から、犯人をでっちあげてしまう名シーンは

この作品にあります。

捜査ではなくて、推理するのが好きな主人公モース警部の個性がもっとも顕著なので、

デクスターのベストにする人がいるのも頷ける。

モースは現場で指紋採集などしない。

自分の好敵手となるべく知的な犯人が、指紋を残すなどというミスをしてはいけないのだ!

物的証拠を集めれば推理する必要がないのに、

モースは推理に耽ってしまうのだ。

仮説を立てては、物証で覆されるというパターンが多いが、

その論理の多さがデクスターの魅力。

ラストの大どんでん返しは私はあまり、大だとは思わなかったが、

デクスターの魅力は、途中の仮説の量である。

論理の迷宮に酔うのがデクスターの楽しみ方。

はっきり言えば、真犯人はどうでもいい。

というか、クリスティ作品の真犯人を忘れる奴はいないと思うが、

デクスター作品では、それはありえますw

「死はわが隣人」に繋がっているエピソードがあるという説もあるが、

私は気づきませんでした。

気づいた人、教えて下さい。