『花見川のハック』 稲見一良 角川文庫

遺作集 花見川のハック (角川文庫)

遺作集 花見川のハック (角川文庫)

本書のベストセリフ

「世間には、悪事を働いてのうのうと生きてる人間が少なくありません。

政治屋から暴走族の類まで、

やっている事に大小の差はあるが、

この連中が世の中のペスト…

害虫である事には違いはない。

地位を利用して巨万の金で私腹を肥やす者から、

弱者に苦痛を与える事だけがおもしろいという暴力狂まで多種多様だが、

共通するのは被害に泣く人たちがいる事だ」


・石の鳥獣 まえがきにかえて

オクラホマキッド

・マリア

・花見川のハック

・不良の旅立ち

・花の下にて

・煙

・栄光何するものぞ

・曠野

・シューシャイン

・男結び

・鳥


の12編が収録された珠玉の短編集。

一個目の自衛隊のC-1輸送機を奪う話から

もう釘付けです。

バイクとか車なんていう、

スケールの小さいメカにハァハァしてるのは、

小物のチンピラの暴走族だよね。

ドライバーのかっちょよさではなくて、

整備士やナビゲーターのかっちょよさを追求した渋いハードボイルド。

というか冒険小説というか、ファンタシィでもある。

トンデモないものも喋るし、

もちろん、犬率も高いです。

表題作の「花見川のハック」は

「花見川の要塞」には直接関係ないが、

要塞同様ファンタジィの雰囲気が素晴しい。

男の生き様死に様を描いた凛とした傑作集である。