『真空ダイヤグラム』 スティーヴン・バクスター 小野田和子・他訳 ハヤカワ
真空ダイヤグラム―ジーリー・クロニクル〈2〉 (ハヤカワ文庫SF)
- 作者: スティーヴンバクスター,Stephen Baxter,小野田和子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2003/01/01
- メディア: 文庫
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ゲーデルのヒマワリ
真空ダイヤグラム
第五部:人類対ジーリー、最終闘争の時代
密航者
天の圧制
ヒーロー
第六部:ジーリー、他宇宙への飛翔
秘史
第七部:フォティーノ・バードの最終勝利
<殻>
八番目の部屋
バリオンの支配者たち
エピローグ:イヴ
私が一番感動したのは「ゲーデルのヒマワリ」である。
宇宙が誕生して10億年の若さの時に、
ゲーデルの不完全性定理を発見してしまい、
宇宙にある全ての真理を証明出来ない虚しさから、
厭世的になる宇宙人種族の物語。
130億年後に地球人類が彼らにファーストコンタクトした時、
彼らは、一辺が1000万kmのフラクタル四面体コンピュータの中のデータとして
生きていた。
証明出来ない真理があるということは、正しい認識が出来ない場合が有り得る。
正しい生き方が出来ないのに、生きることに、情報を認識することに何の意味がある?
不可知な問題、否決定的な問題が存在するのに、知的生命が情報を処理する能力があるのは何故だ?
考える力が少ない動物でも、味方と敵を認識し狩りは行う能力がある。
知力の本質は認識ではなくて知覚ではないのか?
肯定も否定も乗り越えて、ただ、情報を知りたがる知識欲が、
知的生命体の本質ではないのか?
そして彼らは130億年間、自分では何もせずに全宇宙の全てを記録する傍観者となった。
人類は彼らから知識を引出す為に交渉するが、彼らはもちろん人類を無視し、
人類の行動を記録するのみ。
物理的攻撃をしても、人類と交渉の席につこうとはしない。
自分の身を守る為であっても、戦うという行為、判断、認識は選択しない。
生きる力に応用しない知識を溜め込んで何の役に立つのか?
生存欲よりも知識欲の方が強いのが、本当の知的生命体である。
知的生命体だから戦いというケダモノでも出来る行為は出来ないのだ。
全てに絶望して生きる気力が無くなっても、知識を求めるのがもっとも高度な知的生命体である!
美術愛好家としてダウ・アル・セット(サイコロの第七の目)ネタに触れておくと、
詩人マラルメを元ネタとするのが普通の知識人だが、