『ナヴァロンの要塞』 アリステア・マクリーン  早川文庫NV

女王陛下のユリシーズ号』 には劣るが、

ボブ・ラングレー の『北壁の死闘』 や

ジャック・ヒギンズ の『鷲は舞い降りた』 よりイイ!

上記2作と被るネタもあるので、

これを先に読むと『北壁の死闘』 と『鷲は舞い降りた』 の甘さが目立つので、

先に『鷲は舞い降りた』 『北壁の死闘』 の順番で読んだ方がいいだろう。

本作は百合種同様男率100%!

女を思い出すこともしない硬派の戦争冒険小説である。

ナヴァロン島にはギリシャ人の民間人も住んでいるので、

女が出て来る事も不可能ではないが、

そんな無駄な描写は一切ありません。

ストーリーの切れ味が鋭くて一気読み出来ます。

場面転換してストーリーが急転するパターンが多くて、

普通の作家なら引きのテクニックを入れて文章を水増しするところだが、

そんな姑息なテクニックは使わずにグングン物語が加速し続けます。

メンバーの中に敵のスパイが紛れ込んでいるが、

伏線も煙幕も最小限だが、

ミステリとしてピンと来るので、

推理小説としても並以上。

ずば抜けた特殊能力を持つメンバーで構成されたコマンドが、

不可能な任務に挑むという王道のパターンだが、

メンバー全員が万能だとサスペンス感が薄れるので、

一人足手纏いになるおそれがあるメンバーがいるのもお約束だが、

足手纏いが役に立つ能力を使った後で、

本当に足手纏いになって、

彼を同行させても任務の成功率が下がるだけなのに、

簡単に見捨てないで、連れて行く判断をする隊長がデラかっちょええ!

ヒギンズの主人公なら簡単に見捨てるよなw

足手纏いのミスが常にピンチを呼び込むわけではなくて、

逆にチームに有利に働くこともあるのが捻りがあって面白い。

戦争小説だがイズムを超越しているので、

うざい思想の押し付けがなくて、

純粋に物語を楽しむことが出来る傑作である。

素晴しい○○主義の愛する人がいる祖国の為に戦う!

などというのはうざいよな。

常に大ピンチではなくて、

主人公側が圧倒的に有利なシチュエーションも発生するのも逆に新鮮。

有利過ぎる戦闘状況で主人公が、

こんなものは戦争ではない、虐殺だ!

と敵の死を嘆き悲しむのも魅力的。

百合種より生存率が高いので、

こちらの方が百合種よりは気楽に読めるであろう。

これを読んでから世界一悲惨な地獄の戦場

百合種を読んで絶叫して下さい。

戦争冒険小説の第一人者はマクリーンで決定だね!