『復活の日』 小松左京
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映像化は成功したと思う。
原作より泣きの要素が強調されており、脚本も見事である。
たかがインフルエンザで人類が滅亡し、
核兵器の力で復活するという皮肉は、原作小説を読んでないと明確には伝わらないが、
それ以外は全て映画版が勝っていると思う。
原作では南極基地の最後の人類は一万人ぐらいいたが、
映画では500人ぐらいに減らしていたのもいい判断でしたな。
インフルエンザウィルスが活動出来ない冷地南極以外の人類は全滅するが、
滅び行く人類の情報を知りつつ、
各国の南極基地の隊員たちは何も出来ない。
南極が安全だと気付いた人類が大量に南極に押し寄せたら、
食料不足で、南極の人々も全滅することになる。
種の保存の為に、原作では通信管制を引いて、南極は沈黙傍観に徹するのだが、
映画では、助けを求める少年の無線に南極基地の隊員が応答してしまう。
原作では応答しようとする隊員を阻止する為に殴り合いが始まるのだが、
映画では少年が無線機の正しい使い方を知らずに、
CALLボタンを押し続けて喋るので、
南極からの通信は少年には届かず、
「誰も生き残ってないんだね」
と少年の言葉と銃声が聞こえ、
「きっと空に向かって撃ったんですよ」
の言葉で殴り合いが始まるというように、
悲劇性はそのままで、客の共感を呼ぶように上手い演出に昇華している。
原作ではソ連原潜も味方だが、映画では、
南極に強行上陸しようとする敵として出てくるのも上手い。
派手な戦闘シーンのない原作より、
潜水艦同士の水中戦もある映画の方が見応えがある。
南極基地の人員は基本的に各国の軍人なので、
圧倒的に女性が少ないという問題を、
小説では「マスでもかいてろ!」
とギャグで誤魔化すのだが、
映画ではレイプ事件が発生してしまい、
女性は全員、性の慰安婦業務につくことを余儀なくされる。
ヒロインのオリビア・ハッセー(ジュリエットですぞ!)も
くじ引きで恋人でもない男の性欲の処理をさせられる破目になる。
ヒーローの草刈正雄の日本での恋人多岐川裕美が、
ボートを走らせながら洋上で自殺するシーンも原作にはなかったよな?
映画の方が悲劇性が強調されていて、ほんと、泣けますよ。
ぎゃーじんの俳優も大量に起用し、海外公開前提の作品だが、
キリスト教を馬鹿にしているのもいい!
人類滅亡後、アメリカの核ミサイルの自動報復システムが、
地震で誤作動して核を発射する可能性があるのに気付いた南極は、
システムを止める為に、ワシントンにコマンドを上陸させるのだが、
地震でヒーロー以外のコマンドは全滅する。
もっともウィルスが生きているワシントンなので、
コマンドは南極の汚染を避けるために、
最初から帰還は許されない出撃であるが、
生き残ったヒーローは北米大陸から歩いて南極を目指す!
その旅の途中で廃墟になった教会の中で、
イエス・キリスト像に向かって、
「あなたは何をしているのですか?」
「答えてくれませんね」
「ずっとここで寝ていなさい」
と呟くシーンは素晴らしかったです。
神の奇蹟は起きないが、核ミサイルの奇蹟が起こって、
核兵器の威力はウィルスをバスターウィルスに変化させる。
地球は浄化されていく。
アルゼンチンでボロボロの着衣のヒーロー(モーゼみたいな外見になっているのもいい!)
とヒロインが出会う奇蹟も、
足で稼いだ地道な奇蹟で超感動しますた。