『ダークグリーン』③ 佐々木淳子

”生命”を創ったのは”彼ら”ではなかったが、”彼ら”はいつのころからか、

”生命”のプログラムを変化させる術を心得ていた。

”彼ら”は遊ぶ、遺伝子(プログラミング)を変化させる。

――「よろしい、今回のは非常に良い出来だ。以前は大きく創りすぎ存在をストップさせたが、今回のはかなり面白い…」

――「…いや、また失敗のようだ」

――「よろしい…存在をやめさせよう!」

”彼ら”は決心をする。人類を破滅の方向へ向かわせる決心を固める。

そしてふと考える、

――「我々は、何?」


北斗「俺が何もしないでブラブラしていても、世の中何も変わっちゃいない…

    殺人犯そうと、泥棒しようと、学校行こうと、働こうと、自殺しようと、遊び回ろうと、

    …たいして変わりゃしない。いてもいなくてもおんなじさ。

    ねえ…俺達は幼稚園・小学校・中学校・高校とエスカレーターみたいに乗りついで来たから…

    いきなりエスカレーターがなくなって所属する位置がなくなると…

    ぽーんと無風地帯に置かれると、すごく不安になっちゃうんだ。

    あわてて学生なり会社員なりなんなり自分の位置を…

    レッテルを貼らなくちゃ不安なんだ。

    肩書き、レッテル…兄きみたいに社会のある位置に納まっていれば安心して生活できるんだ。

    学校の目的は勉強もあるけど…社会に組み込まれる為の訓練もあるかもしれない…

    組み込まれても平気なように…毎日の規則正しい生活に耐えられるように…

    ねえ、俺達は本来もっともっと自由な筈だよね…」


北斗「うるさいっ!人間の悩み事は愛だの恋だのばっかりじゃないんだっ!!」


気持ち悪くて恥ずかしい少女漫画で、ここまでやっていいのかと驚いてしまう本格SFなのである。

ストーリーの面白さとはこの作品のことである。

SF漫画の中で、もっとも密度の高いストーリー展開がこのダークグリーンである。

毎巻ごとに設定が変わると言っていい。

SF小説界で佐々木淳子以上と言えるのは、P・J・ファーマーとM・ムアコックだけである。

階層宇宙シリーズの物語作法をバージョンアップしたのが本書である。

夢の世界での悪魔退治が終わり、遂に現実世界での神狩りが開始されるのである。

幻想的な夢の世界を描いた一巻、夢の世界に科学兵器を導入した二巻、

そしてこの三巻は現実世界の日常生活をセンス・オブ・ワンダーしてしまったのだ!

生活の臭い漂う現実性で具現されるSF感覚、ウルトラセブン「狙われた街」のSFイメージを、

セブンもメトロン星人も登場させないで描写してしまったのがこの三巻である。