『100万回生きたねこ』 佐野洋子作 岐阜農林高校 佐古まりの脚本 既成脚色

100万回生きたねこ Special Box

100万回生きたねこ Special Box

「100万回生きたねこ」もの。

と言いたいが、単純に舞台化した作品ではありません。

「100万回生きたねこ」の舞台練習風景を描く劇部もの。

で、終わったら並みの高校である。

全国レベルの岐阜農林高校の脚本なので、

更に2捻りします。

原作の絵本をそのまま舞台化しても感動出来ると思いますが、

はっきりいって、原作よりこの脚本の方が凄いです。

楳図かずおの「漂流教室」というか、

ティーブン・バクスターの「時間的無限大」

に近い超スケールの感動を受けました。

テーマは生きることの素晴らしさ。

愛する人がいなくなるどころか、

全てが崩壊した無意味な世界となろうとも、

人は芸術があれば生きていけると主張する素晴らしい作品である。

演劇人は、

「この素晴らしい舞台の上での至福の時が永遠に続けばいい」

などと思うことがあると思いますが、

演劇という芸術の素晴らしさそのものを演劇化した究極の演劇である。

劇中劇も一人五役以上で、並みの演劇の5倍の密度を誇ります。

マジで凄いです。

坂道のセットの使い方も巧い!

リアルなセットは金と暇かければ作れますが、

演劇空間での必然性を忘れたセットは、単なる装飾であり、

演劇空間を阻害するものだと、この演劇見て理解出来ました。

映画のセットと演劇のセットには別コンセプトが要求される。

暗転なしで一気に見せる為の知恵を凝らしたセットも見事です。

幕間討論会で大人が、

「子供に岐阜農林はぜひ観るべきだと薦められて来ました」

と発言してましたが、

まさにその通り!