『進化しすぎた脳』 池谷裕二 講談社ブルーバックス

ブルーバックスにしては厚めだが、高校生相手の講演録なので、平易な話し言葉で書かれているので、サクサクと一気読み出来る。

著者が自画自賛してるが、厭味にならずに本当にグルーヴ感が素晴しい。

☆5付けたいくらいだが、量子力学ポストモダン思想に汚染されている箇所があり、ポパーの哲学も著者は知らないみたいなので、減点して☆4.97と評価します。

固い決定論者の私だが、自意識は脳の副産物という論点はとても参考になった。脳の中の自意識が、外部情報を解析し、体を動かしているというケースは少ないという事実には感動。

自意識が気付かない無意識で判断して人間は行動していることが多いのだ。

脳が無意識で判断して体に指令与えた後に、
自意識に行動の原因となった外部情報を見せるのは痛快。

車を運転していて子供が飛び出してくるとブレーキを踏みますが、
自意識では子供を見たからブレーキを踏んだと理解しているが、
実は足は自意識が見る前にブレーキを踏んでいるw

本人の自意識には認識されないが、
脳は無意識で色々やってるナイスな奴w

自意識が見てる景色の97%は脳が編集した風景だそうですよ。
眼の解像度は100万画素。
編集せずにそのまま見えたら、直線もギザギサの荒い画像にしか見えないそうです。

自意識の中に感情は含まれない立場を取ってるのもナイス。

感情は無意識です。

美しい絵画を見て感動して涙を流すのも、
殴られて痛くて泣くのも、同じような条件反射みたいなものだそうですww

感覚の反射に過ぎない芸術より、
抽象的な言語による感動がやはり、知的レベルが高いざんす。

抽象的というと哲学的と誤解する人もいるかもしれないが、
汎化性が重要なキーワードである。

音楽や絵画よりは文学の方が知的レベルが高いが、
文学より数学の方が更に知的レベルが高いざんす。

科学は再現性が必要だが、
シナプスのネットワークを常に作り変えていく脳は、
科学の対象に出来ないのではないかと、
脳科学者でありながら真摯に考察する著者は偉い。

科学も信仰ではないのかと真面目な科学者が陥る罠に著者は嵌りかけているが、
ポパー先生が科学が科学教だとしても宗教よりはベターと言ってるので、
堂々と科学マンセー主義を貫いて欲しい。

非科学的な自意識、自由意志、心はイラネと納得出来る良書。